比較・総論

受発注システム クラウド版 比較10選|選び方とメリット

受発注システム クラウド版 比較10選

受発注システムを「とりあえずクラウドで」と検討する企業が増えている。しかしクラウド型と一口に言っても、Bカート・COREC・スマレジB2B・TANOMU・ebisumart・楽楽B2Bなどタイプがバラバラで、何を基準に選べばよいかが見えにくい。

結論として、月商1,000万円以下ならBカート・COREC・スマレジB2Bが現実的、1,000万〜1億円なら楽楽B2B・ebisumart・Bカート、1億円超ならebisumart・ecbeing BtoBがクラウドで成立する規模だ。本記事では「クラウド型とは何か」「他形態との違い」「主要10製品の比較」「失敗パターン」までを実務観点で整理する。

クラウド型とオンプレ・パッケージ型の違い

受発注システムは3つの提供形態に分かれる。クラウド型を理解するには、他2形態との対比が早い。

クラウド型(SaaS/ASP)はベンダーが運用するサーバーをブラウザ経由で利用する。初期費用5〜30万円、月額1〜10万円が中心価格帯。Bカート、COREC、スマレジB2B、ebisumart、楽楽B2B、TANOMU等。サーバー運用はベンダー側のため、社内にIT部門が薄い中小企業でも導入できる。

パッケージ型はソフトウェアライセンスを購入し、自社環境(オンプレ/プライベートクラウド)に構築する。初期費用300万〜1,000万円、月額メンテナンス10〜30万円。アラジンEC、TS-BASE 受発注、CROSS MALL等。カスタマイズ自由度が高く、業務に合わせて作り込める。

フルカスタム(オンプレ/クラウド構築)型はゼロから構築。初期費用数千万〜数億円、開発期間6ヶ月以上。ecbeing BtoB、SI Web Shopping、mcframe等。年商50億円超の大企業向け。完全に独自要件で構築できる。

3形態の違いは「カスタマイズ自由度 × 初期コスト × 構築期間」のトレードオフだ。クラウド型は初期コストが圧倒的に低く構築期間が短い反面、カスタマイズに制約がある。逆にオンプレ型・フルカスタム型は初期コストが高く期間も長いが、業務にぴったり合わせられる。本記事で扱うのはクラウド型に絞る。詳しい3形態の総合比較は受発注システム 比較15選を参照してほしい。

項目 クラウド型(SaaS/ASP) パッケージ型 フルカスタム型
初期費用5〜30万円300〜1,000万円数千万〜数億円
月額費用1〜10万円10〜30万円(保守)運用保守契約
構築期間1〜2ヶ月3〜6ヶ月6ヶ月〜2年
カスタマイズ自由度制約あり中〜高完全自由
サーバー運用ベンダー任せ自社(または委託)自社(または委託)
機能アップデート継続的・自動有償アップグレード都度開発
対象規模目安中小〜中堅(〜年商10億)中堅(年商10〜50億)大手(年商50億〜)
代表製品Bカート/COREC/ebisumartアラジンEC/TS-BASEecbeing/SI Web Shopping
表1:クラウド型/パッケージ型/フルカスタム型の比較

クラウド受発注の5つのメリット

クラウド型を選ぶ動機を、5つのメリットに整理する。

1. 初期費用が低い。オンプレ型の300万〜が必要なところを、クラウド型は5万〜で開始できる。月商1,000万円以下の中小事業者には、これだけで他の形態を選ぶ理由がない。

2. 構築期間が短い。クラウド型は契約から1〜2ヶ月で公開できる。オンプレ型・フルカスタム型は3ヶ月〜2年。商機を逃さずに受発注業務を立ち上げたい場合に有利。

3. サーバー運用・保守がベンダー任せ。社内にインフラ運用者を抱える必要がない。OS/ミドルウェアのバージョンアップ、セキュリティパッチ、バックアップは全てベンダー側で実施される。

4. 機能アップデートが継続的。月次〜四半期ごとに新機能が追加される。たとえばebisumartは月次バージョンアップを公約しており、競合の機能を取り込みながら継続改善される。オンプレ型は購入時の機能で固定され、追加開発に都度費用が発生する。

5. リモートワーク対応が標準。ブラウザがあればどこからでもアクセスできる。VPN設定や端末配布が不要で、コロナ禍以降のリモート前提業務に最適。

クラウド受発注の3つのデメリット・注意点

メリットだけ見ると万能に見えるが、クラウド型には固有の弱点もある。

1. カスタマイズに上限がある。標準機能の範囲を超える業務フロー(複雑な承認階層、独自の在庫引当ロジック、特殊な価格計算)は実装できない場合がある。CSV取込・API・Webhookで連携拡張は可能でも、ベンダー側の本体改修は不可だ。複雑な業務をそのまま再現したい場合は、パッケージ型を選ぶほうが結果的に安い。

2. データ所在地・主権の制約。データはベンダー側のクラウドに保存される。海外サーバーの場合、個人情報保護法の越境移転規制、GDPR、業界規制(金融・医療)に抵触する可能性がある。国内サーバー指定があるかは契約前に必ず確認する。

3. 長期運用でTCOが逆転することがある。月額10万円のクラウドを10年使うと総額1,200万円。初期500万+月額メンテナンス10万円のパッケージなら10年で1,700万円だが、カスタマイズ100万円分込みなら逆転する。「3年TCO」で比較するのが妥当だが、10年スパンで自社規模が拡大する見通しなら、最初からパッケージ型を選ぶ判断もある。

クラウド受発注 主要10選

クラウド型に絞った10製品を、価格帯順に紹介する。

1. Bカート(テクロ)。月額9,800円〜。累計2,000社超。BtoB必須機能(掛け払い・取引先別価格・承認制)を標準対応。kintone・freee連携が強く、中小〜中堅で最も汎用性が高い。Cravalは公式パートナー。

2. COREC(ラクーンコマース)。月額9,800円〜、無料プランあり。受注管理特化。スーパーデリバリーとの連携で買い手企業850万社の集客力。FAX削減目的なら最小コスト。

3. スマレジ・B2B(スマレジ)。月額9,900円〜。AI-OCR・kintone連携・API連携が充実。スマレジPOSとの連携を見据える小売事業者向け。

4. TANOMU(インフォマート子会社)。月額9,800円〜。食品×LINE特化、発注ユーザー10万店舗。食品卸の中小なら第一候補。

5. Goofice(オープンロジ系)。月額数万円〜。発注書アップロード→自動データ化→出荷指示連携。物流外注(オープンロジWMS)と組み合わせて受注〜出荷を一気通貫。

6. 楽楽B2B(ラクス)。月額数万円〜。楽楽販売・楽楽明細・楽楽精算とシリーズ統合。バックオフィスをラクス系で揃える事業者向け。

7. CO-NECT(CO-NECT)。月額3,000円〜。スマートフォン特化、買い手企業20万社。シンプルな受発注を最小コストで開始したい事業者向け。

8. アラジンEC クラウド版(アイル)。月額数十万円〜。販売管理アラジンオフィスと密連携。中堅事業者で販売管理と一体運用したい場合のクラウド型。

9. ebisumart B2B(インターファクトリー)。月額数十万〜数百万円。クラウド型のフルカスタムBtoB EC。月次バージョンアップで継続改善。年商10億〜100億円の中堅・大手向け。

10. ecbeing BtoB Cloud(ecbeing)。月額数百万円〜。シェアNo.1のecbeingがクラウド版で提供する大手向け基盤。SAP・Oracle EBS連携実績豊富。年商100億円超の大企業向け。

製品名 月額目安 初期費用 対象規模 主な強み マルチストア
Bカート9,800円〜5万円〜中小〜中堅BtoB機能標準・kintone連携対応
COREC9,800円〜(無料あり)0円〜中小SD連携で集客力
スマレジ・B2B9,900円〜30万円〜中小〜中堅AI-OCR・POS連携
TANOMU9,800円〜要問合せ中小(食品)食品×LINE特化
Goofice数万円〜要問合せ中小物流WMS連動
楽楽B2B数十万円〜数十万円〜中堅楽楽シリーズ統合対応
CO-NECT3,000円〜0円〜中小スマホ特化・最小コスト
アラジンEC クラウド版数十万円〜数百万円〜中堅販売管理アラジン密連携対応
ebisumart B2B数十万〜数百万円数百万〜数千万円中堅〜大手月次バージョンアップ対応
ecbeing BtoB Cloud数百万円〜数千万円〜大手シェアNo.1・基幹連携対応
表2:クラウド受発注 主要10製品の費用・対象規模・強み

クラウド製品の選定5つの判断軸

10製品から自社に合うものを2〜3に絞る判断軸を整理する。

1. 月商規模と3年後の見通し。月商1,000万円以下なら1〜4の低価格帯、1,000万〜1億円なら5〜8の中価格帯、1億円超なら9〜10の高価格帯。リプレースコストが大きいため、3年後の規模で選ぶ。

2. 既存システム連携の実績。販売管理・在庫管理・会計とのAPI連携実績を確認する。「APIあり」ではなく「具体的な連携実装事例」が公開されているかで判断する。Bカートはkintone・freee、アラジンECは販売管理アラジンオフィスとの連携実績が多い。

3. BtoB特有機能の標準対応掛け払い決済・取引先別価格・承認ワークフロー・最低注文数量・ロット単位購入を標準対応するか。低価格帯製品は標準で対応しているものが多いが、汎用BtoC流用型のクラウドは弱い。

4. SLA(稼働率保証)とサポート体制。稼働率99.9%以上をSLAで保証するか、障害時の連絡体制(24時間 vs 平日日中)、復旧目標時間(RTO)。EDI接続や大手取引先との取引が絡む場合、SLAが不十分だと業務影響が大きい。

5. データ所在地・出力ポリシー。データセンターが国内か海外か、データ出力(CSV・API)が自由にできるか、契約終了時のデータ持出可否。法規制(個人情報保護法・GDPR)と将来の移行リスクの両方に関わる。

月商〜1,000万円

最小コストで開始したい中小事業者。BtoB必須機能の標準対応を確認。

  • Bカート(9,800円〜)
  • COREC(無料〜)
  • スマレジ・B2B(9,900円〜)
  • TANOMU(食品)

月商1,000万〜1億円

販売管理・在庫・会計と一体運用したい中堅事業者。連携実績で選ぶ。

  • 楽楽B2B(数十万円〜)
  • アラジンEC クラウド版
  • ebisumart B2B
  • Bカート+API連携

月商1億円超

エンタープライズ基盤としてクラウドで成立する規模。SLA・基幹連携を重視。

  • ebisumart B2B
  • ecbeing BtoB Cloud
図1:規模別のクラウド製品の現実的な選択肢

セキュリティ・データ主権・SLAの実務確認

クラウド受発注で最も軽視されがちなのがセキュリティとSLAだ。契約前に確認すべき項目を実務観点で整理する。

セキュリティ認証:ISMS(ISO27001)取得、プライバシーマーク取得、SOC2 Type II報告書の有無。主要クラウド製品は最低限ISMS取得が標準。情報処理推進機構(IPA)の中小企業の情報セキュリティ対策ガイドラインでも、クラウドサービス選定時の確認項目が示されている。

データ所在地:データセンターが国内(AWS東京リージョン、Azure東日本等)か海外か。海外サーバーの場合、個人情報の越境移転に該当し、利用規約への明記が必要。

SLA(Service Level Agreement):稼働率99.9%以上が望ましい。99.5%は年間43時間のダウンタイムを許容することになる。SLA違反時の補償条項(料金返金、損害賠償上限)も確認する。

バックアップとリストア:日次バックアップが標準。障害時のリストア所要時間(RTO)と過去どこまで戻せるか(RPO)。BtoB EC市場の急成長(経済産業省「電子商取引に関する市場調査」によれば2023年で492兆円)に伴い、業務停止の機会損失も拡大している。

契約終了時のデータ持出:CSV・API経由でのデータ全件出力が可能か、出力フォーマット、出力期限。これを契約段階で確約しておかないと、将来のリプレース時にデータが取り出せず、ベンダーロックインに陥る。

クラウド受発注で陥りがちな3つの失敗

クラウド受発注の典型的な失敗パターン3つと、回避策を示す。

1. 月額の安さだけで選び、3年後にカスタマイズ費用で逆転する。月額9,800円のBカートでもカスタマイズ200万円なら3年で235万円。初期200万+月額20万円の楽楽B2B拡張プランなら3年で920万円だが、機能が満たされて運用工数が少ないなら結果的に安い場合もある。「3年TCO+運用工数」で比較する。

2. データ所在地・データ持出ポリシーを確認せず契約し、リプレース時に詰む。クラウドの最大のリスクは「やめたくてもデータが取り出せない」状況だ。契約前に必ず「CSV全件出力可否」「API経由のデータ出力可否」「契約終了後のデータ保管期間」を明文化する。

3. 業務がクラウドの標準機能に合わせられず、現場が抵抗する。クラウド型はカスタマイズに上限がある。導入時に「現状業務をどこまで標準に合わせるか」を経営判断する。FAX削減と業務効率化が目的なら、ある程度の業務変更は受け入れる前提でないと運用が回らない。BtoB EC導入事例でも、業務側の標準化合意が成否を分けている。

2〜3製品に絞ったら、必ず実機デモを依頼し、自社の代表的な業務シナリオ(受注→出荷指示→請求)を一通り操作してもらう。標準機能で回せるか、カスタマイズが必要かが見えてくる。

よくある質問

受発注システムのクラウド型とオンプレ型はどちらが安いですか?
月商1,000万円以下の中小事業者ならクラウド型が圧倒的に安価です。初期5〜30万円・月額1〜10万円で開始できます。月商1億円超の大規模事業者は、5〜10年のTCOで見るとオンプレ型・パッケージ型のほうが安くなる場合もあります。クラウドは初期コストが小さい代わりに、長期運用で月額が積み上がる構造を理解しておく必要があります。
クラウド受発注システムのデータ管理は安全ですか?
主要クラウド製品はISO27001・ISMS取得、SSL通信、暗号化保存などの標準セキュリティを実装しています。ただし重要なのは「データ所在地(国内サーバーか海外か)」「バックアップ頻度」「障害時のSLA(稼働率99.9%以上か)」の3点。契約前に必ずベンダーへ確認してください。経済産業省・IPAのガイドラインも参考になります。
クラウド受発注はカスタマイズできますか?
標準機能の範囲ではカスタマイズ可能ですが、コアロジック改修はできません。Bカート・スマレジB2BなどはAPI・Webhook・スクリプトで業務に合わせた拡張が可能です。一方、画面レイアウトの大幅変更や独自業務フローの追加は、パッケージ型・フルカスタム型のほうが自由度が高くなります。
クラウドからオンプレに移行することは可能ですか?
技術的には可能ですが、移行コスト(データ移行・業務再設計・カスタム開発)が初期構築費を上回るケースが多いです。事業規模の急成長が見込まれる場合は、最初からクラウドの中でも「拡張性が高い製品(Bカート・ebisumart等)」を選ぶか、年商10億円超のフェーズでフルカスタム型に移行する2段階戦略が現実的です。
クラウド受発注で複数拠点・複数ブランドを運用できますか?
Bカート・ebisumart・アラジンECなどはマルチストア対応で、1契約で複数ブランドを運用できます。スマレジB2B・CORECは基本1ブランド向け。複数拠点(倉庫・支社)の在庫を統合管理する場合は、在庫管理システム(ネクストエンジン・LOGIZARD等)との連携前提で設計してください。

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