比較・総論

受発注システム クラウド型を中心に比較8選|選び方とメリット

受発注システム クラウド型を中心に比較8選

受発注システムを「とりあえずクラウドで」と検討する企業が増えている。しかしクラウド型と一口に言っても、Bカート・COREC・スマレジEC・B2B・TANOMU・CO-NECT・ebisumartなどタイプがバラバラで、何を基準に選べばよいかが見えにくい。

結論として、小規模ならBカート・COREC・スマレジEC・B2Bが現実的、中堅ならBカート・ebisumart(販売管理一体ならアラジンECも導入形態を確認して検討)、大手ならebisumart・ecbeingのSaaS版ecWorksが候補になる。本記事では「クラウド型とは何か」「他形態との違い」「主要8製品の比較」「失敗パターン」までを実務観点で整理する。

クラウド型とオンプレ・パッケージ型の違い

受発注システムは3つの提供形態に分かれる。クラウド型を理解するには、他2形態との対比が早い。

クラウド型(SaaS/ASP)はベンダーが運用するサーバーをブラウザ経由で利用する。料金は製品ごとに幅が大きい(例:COREC 初期0円・月額2,980円〜、Bカート 初期8万円・月額9,800円〜、ebisumart 初期300万円・月額25万円程度〜)。Bカート、COREC、スマレジEC・B2B、ebisumart、CROSS MALL(月額1万円〜)、TANOMU等。サーバー運用はベンダー側のため、社内にIT部門が薄い中小企業でも導入できる。

パッケージ型はソフトウェアライセンスを購入し、自社環境(オンプレ/プライベートクラウド)に構築する。公式の例では、アラジンECの小規模カスタマイズで初期400万円〜・月額7万円〜。アラジンEC、TS-BASE 受発注等。カスタマイズ自由度が高く、業務に合わせて作り込める。

フルカスタム(オンプレ/クラウド構築)型は要件に合わせて大きく作り込む。料金は個別見積り。ecbeing BtoB、SI Web Shopping等。大企業向けで、独自要件に合わせて構築できる。

3形態の違いは「カスタマイズ自由度 × 初期コスト × 構築期間」のトレードオフだ。クラウド型は初期コストが圧倒的に低く構築期間が短い反面、カスタマイズに制約がある。逆にオンプレ型・フルカスタム型は初期コストが高く期間も長いが、業務にぴったり合わせられる。本記事ではクラウド型を中心に、導入形態の確認が必要な製品も比較する。詳しい3形態の総合比較は受発注システム 比較12選を参照してほしい。

項目 クラウド型(SaaS/ASP) パッケージ型 フルカスタム型
料金の例製品ごとに幅が大きい(COREC 初期0円・月額2,980円〜、Bカート 初期8万円・月額9,800円〜、ebisumart 初期300万円・月額25万円程度〜)アラジンEC 初期400万円〜・月額7万円〜(小規模カスタマイズの例)個別見積り
構築期間標準機能なら短い作り込みの範囲で変わる長期になりやすい
カスタマイズ自由度制約あり(製品・契約で異なる)中〜高高い(技術・予算・契約の制約は確認)
サーバー運用ベンダー任せ自社(または委託)自社(または委託)
機能アップデートベンダー側で継続的に行う製品が多い製品・保守契約で異なる製品・保守契約で異なる
対象規模目安中小〜中堅中堅大手
代表製品Bカート/COREC/ebisumartアラジンEC/TS-BASEecbeing/SI Web Shopping
表1:クラウド型/パッケージ型/フルカスタム型の比較

クラウド受発注の5つのメリット

クラウド型を選ぶ動機を、5つのメリットに整理する。

1. 初期費用が低い。クラウド型には初期費用0円の製品もある(COREC、CO-NECT)。初期費用を抑えたい小規模事業者では、必要な機能と運用条件を満たすクラウド型が候補になる。

2. 構築期間が短い。クラウド型は標準機能で始められるため、作り込みが前提のオンプレ型・フルカスタム型より公開までが短い。商機を逃さずに受発注業務を立ち上げたい場合に有利。

3. サーバー運用・保守がベンダー任せ。社内にインフラ運用者を抱える必要がない。OS/ミドルウェアのバージョンアップやセキュリティパッチはベンダー側の作業になるのが一般的だが、バックアップの対象・頻度・復元方法と責任範囲は製品ごとに確認する。

4. 機能アップデートが継続的。利用中に新機能が追加されていく。たとえばebisumartは週に一度アップデートを行っている(公式)。オンプレ型・パッケージ型の機能更新の可否や費用は、製品と保守契約によって異なる。

5. リモートワーク対応が標準。ブラウザがあればどこからでもアクセスできる。アクセス方法や利用端末の制限は、自社のセキュリティ方針に合わせて設計する。

クラウド受発注の3つのデメリット・注意点

メリットだけ見ると万能に見えるが、クラウド型には固有の弱点もある。

1. カスタマイズに上限がある。標準機能の範囲を超える業務フロー(複雑な承認階層、独自の在庫引当ロジック、特殊な価格計算)は実装できない場合がある。CSV取込・API・Webhookで連携拡張できる製品はあるが、本体改修の可否・対応範囲・追加費用は製品と契約によって異なるため、必要な変更内容を具体的に示して確認する。複雑な業務をそのまま再現したい場合は、パッケージ型を選ぶほうが結果的に安い。

2. データ所在地・主権の制約。データはベンダー側のクラウドに保存される。海外サーバーを利用する場合は、取り扱う情報、提供事業者のアクセス範囲、適用される規制(個人情報保護法、GDPR、業界規制など)を踏まえ、必要な手続きを確認する。国内サーバー指定があるかは契約前に必ず確認する。

3. 長期運用でTCOが逆転することがある。長期では月額の累計が初期費用を上回ることがあるため、同じ条件で3年・5年の総額を比べる。長い期間で自社規模が拡大する見通しなら、最初からパッケージ型を選ぶ判断もある。

クラウド型を中心とした受発注システム 主要8選

クラウド型を中心に8製品を紹介する。アラジンECはクラウド版の提供を公式サイトで確認できないため、導入形態を問い合わせで確認する参考候補として扱う。

1. Bカート(株式会社Dai)。月額9,800円〜(ライトプラン・税別)。導入2,500社以上(2026年5月発表)。BtoB必須機能(掛け払い・取引先別価格・承認制)を標準対応。kintone連携アプリ(他社提供)あり。中小〜中堅で汎用性が高い。Cravalは公式パートナー。

2. COREC(ラクーングループ)。初期費用0円。受注側は無料プランとビジネスプラン月額2,980円(税抜)。FAX削減目的なら最小コストで始められる。

3. スマレジEC・B2B(旧 楽楽B2B)。株式会社スマレジが運営(2025年11月に名称変更)。料金は公式サイトで資料請求(2023年12月の告知ではStandardプラン39,800円〜)。AI-OCR(スマホdeOCR)、公開APIを提供。買い手企業15万社(2024年1月時点)。

4. TANOMU(インフォマート)。月額数万円〜の定額課金(受注件数で変動)。インフォマートが提供。LINEで卸の受発注を効率化する製品で、発注側の導入実績は100,000店舗以上。

5. CO-NECT。初期費用0円。受注側の料金は取引先数・受注数に応じて変動(発注側ビジネスプランは月額3,000円・税抜)。PC・スマホ・タブレット対応。55,000社以上の企業取引。

6. アラジンEC(アイル)。小規模カスタマイズの例で初期400〜800万円・月額7〜10万円。販売管理アラジンオフィスと連携。クラウド版の提供は公式サイトで確認できないため、導入形態は問い合わせで確認する。中堅事業者で販売管理と一体運用したい場合の候補。

7. ebisumart(インターファクトリー)。初期導入費用300万円・月額25万円程度から(公式)。クラウド型でカスタマイズできるBtoB EC。週に一度アップデートを行っている。中堅・大手向け。

8. ecWorks(ecbeing BtoBのSaaS版)。初期300万円〜・月額10万円〜(公式)、最低利用期間2年。ecbeingは「ECサイト構築市場 18年連続シェアNo.1」と公表(富士キメラ総研の調査をもとに、2022年度までは自社推定)。SAP等との連携実績を公表。

製品名 月額目安 初期費用 対象規模 主な強み
Bカート9,800円〜(税別)8万円(税別)中小〜中堅BtoB機能標準・API/Webhook
COREC2,980円〜(無料プランあり)0円中小無料で開始できる
スマレジEC・B2B要問い合わせ(2023年12月の告知でStandard 39,800円〜)要問い合わせ中小〜中堅AI-OCR・公開API
TANOMU数万円〜(受注件数で変動)要問い合わせ中小(卸)LINEで受発注
CO-NECT受注側は取引先数・受注数で変動0円中小PC・スマホ・タブレット対応
アラジンEC7〜10万円(例)400〜800万円(例)中堅販売管理アラジンオフィス連携
ebisumart25万円程度〜300万円〜中堅〜大手週に一度アップデート
ecWorks(ecbeing BtoB SaaS版)10万円〜300万円〜中堅〜大手最低利用期間2年・基幹連携実績
表2:クラウド型を中心とした主要8製品の費用・対象規模・強み(各社公式ページ。アラジンECは小規模カスタマイズの例)

クラウド製品の選定5つの判断軸

8製品(アラジンECは導入形態の確認が必要)から自社に合うものを2〜3に絞る判断軸を整理する。

1. 事業規模と3年後の見通し。小規模なら月額制で始めやすい1〜5、中堅〜大手なら初期費用300万円以上の6〜8が候補になる。リプレースコストが大きいため、3年後の規模で選ぶ。

2. 既存システム連携の実績。販売管理・在庫管理・会計とのAPI連携実績を確認する。「APIあり」ではなく「具体的な連携実装事例」が公開されているかで判断する。Bカートはkintone連携アプリ(他社提供)やネクストエンジン、アラジンECは販売管理アラジンオフィスとの連携がある。

3. BtoB特有機能の標準対応。掛け払い決済・取引先別価格・承認ワークフロー・最低注文数量・ロット単位購入を標準対応するか。対応範囲は製品ごとに異なるため、標準機能・追加機能・個別開発のどれで対応するかを確認する。

4. SLA(稼働率保証)とサポート体制。稼働率99.9%以上をSLAで保証するか、障害時の連絡体制(24時間 vs 平日日中)、復旧目標時間(RTO)。EDI接続や大手取引先との取引が絡む場合、SLAが不十分だと業務影響が大きい。

5. データ所在地・出力ポリシー。データセンターが国内か海外か、データ出力(CSV・API)が自由にできるか、契約終了時のデータ持出可否。法規制(個人情報保護法・GDPR)と将来の移行リスクの両方に関わる。

小規模

最小コストで開始したい中小事業者。BtoB必須機能の標準対応を確認。

  • Bカート(9,800円〜)
  • COREC(無料〜)
  • スマレジEC・B2B
  • TANOMU(食品)

中堅

販売管理・在庫・会計と一体運用したい中堅事業者。連携実績で選ぶ。

  • アラジンEC
  • ebisumart
  • Bカート+API連携

大手

エンタープライズ基盤としてクラウドで成立する規模。SLA・基幹連携を重視。

  • ebisumart
  • ecWorks(ecbeing BtoB SaaS版)
図1:規模別のクラウド製品の現実的な選択肢

セキュリティ・データ主権・SLAの実務確認

クラウド受発注で最も軽視されがちなのがセキュリティとSLAだ。契約前に確認すべき項目を実務観点で整理する。

セキュリティ認証:ISMS(ISO27001)取得、プライバシーマーク取得、SOC2 Type II報告書の有無。ISMS等の取得・準拠状況を確認する(例:スマレジEC・B2BはPマーク・ISO27001を表示)。情報処理推進機構(IPA)の中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン第4.0版の付録7「中小企業のためのクラウドサービス安全利用の手引き」に、クラウドサービス選定時の確認項目がまとまっている。

データ所在地:データセンターが国内(AWS東京リージョン、Azure東日本等)か海外か。海外サーバーを利用する場合は、取り扱う情報、提供事業者のアクセス範囲、適用される規制を踏まえ、必要な手続きを確認する。

SLA(Service Level Agreement):稼働率99.9%以上が望ましい。99.5%は年間約43.8時間のダウンタイムを許容することになる。SLA違反時の補償条項(料金返金、損害賠償上限)も確認する。

バックアップとリストア:バックアップの対象・頻度・復元方法と責任範囲を製品ごとに確認する。障害時のリストア所要時間(RTO)と過去どこまで戻せるか(RPO)。BtoB EC市場の急成長(経済産業省の電子商取引に関する市場調査によれば2024年に514.4兆円、2025年8月公表)に伴い、業務停止の機会損失も拡大している。

契約終了時のデータ持出:CSV・API経由でのデータ全件出力が可能か、出力フォーマット、出力期限。これを契約段階で確約しておかないと、将来のリプレース時にデータが取り出せず、ベンダーロックインに陥る。

クラウド受発注で陥りがちな3つの失敗

クラウド受発注の典型的な失敗パターン3つと、回避策を示す。

1. 月額の安さだけで選び、3年後にカスタマイズ費用で逆転する。月額が安くても、カスタマイズ費用を足すと総額が逆転することがある。逆に月額が高くても、機能が満たされて運用工数が少ないなら結果的に安い場合もある。「3年TCO+運用工数」で比較する。

2. データ所在地・データ持出ポリシーを確認せず契約し、リプレース時に詰む。クラウドの最大のリスクは「やめたくてもデータが取り出せない」状況だ。契約前に必ず「CSV全件出力可否」「API経由のデータ出力可否」「契約終了後のデータ保管期間」を明文化する。

3. 業務がクラウドの標準機能に合わせられず、現場が抵抗する。クラウド型はカスタマイズに上限がある。導入時に「現状業務をどこまで標準に合わせるか」を経営判断する。FAX削減と業務効率化が目的なら、ある程度の業務変更は受け入れる前提でないと運用が回らない。BtoB EC導入事例でも、業務側の標準化合意が成否を分けている。

2〜3製品に絞ったら、必ず実機デモを依頼し、自社の代表的な業務シナリオ(受注→出荷指示→請求)を一通り操作してもらう。標準機能で回せるか、カスタマイズが必要かが見えてくる。

よくある質問

受発注システムのクラウド型とオンプレ型はどちらが安いですか?
小規模な事業者ならクラウド型のほうが初期費用を抑えられます(例:COREC 初期0円・月額2,980円〜、Bカート 初期8万円・月額9,800円〜、税別)。一方、長期では月額の累計が初期費用を上回ることがあるため、同じ条件で3年・5年の総額を比べてください。
クラウド受発注システムのデータ管理は安全ですか?
ISMS等の取得・準拠状況を製品ごとに確認してください(例:スマレジEC・B2BはPマーク・ISO27001を表示)。そのうえで重要なのは「データ所在地(国内サーバーか海外か)」「バックアップの対象・頻度・復元方法」「障害時のSLA(稼働率99.9%以上か)」の3点です。契約前に必ずベンダーへ確認してください。IPAの中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン付録7「中小企業のためのクラウドサービス安全利用の手引き」も参考になります。
クラウド受発注はカスタマイズできますか?
標準機能の範囲での設定変更が中心で、本体改修の可否・対応範囲・追加費用は製品と契約によって異なります。BカートはAPI・Webhook・スクリプトタグ、スマレジEC・B2Bは公開APIを提供しており、業務に合わせた拡張が可能です。一方、画面レイアウトの大幅変更や独自業務フローの追加は、パッケージ型・フルカスタム型のほうが自由度が高くなります。
クラウドからオンプレに移行することは可能ですか?
技術的には可能ですが、データ移行・業務再設計・カスタム開発の費用と期間がかかります。事業規模の急成長が見込まれる場合は、最初からクラウドの中でも拡張性が高い製品を選ぶか、規模が大きくなった段階でフルカスタム型へ移行する計画を立てておくのが現実的です。
クラウド受発注で複数拠点・複数ブランドを運用できますか?
製品ごとに扱いが異なります。Bカートは複数ブランドの場合サイトを複数契約します(複数契約の初期費用割引あり)。複数拠点(倉庫・支社)の在庫を統合管理する場合は、在庫管理システム(ネクストエンジン・LOGIZARD等)との連携前提で設計してください。

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