比較・総論

BtoB ECはクラウドか個別開発か|3年総額と判断基準

BtoB ECはクラウドか個別開発か|3年総額と判断基準

メーカーや卸が取引先向けの注文サイト(BtoB EC)を作るとき、最初に分かれるのが「既製のクラウドサービスを使うか、個別に開発するか」です。

取引先別の価格、掛け払い、注文の承認、社内システムへのCSV連携といった一般的なBtoBの機能で足りるなら、既製のクラウドサービスが向いています。業界特有の発注単位や承認の流れ、基幹システムとの即時の同期が、標準機能と連携で再現できないときに、カスタマイズ型のパッケージや個別開発を検討します。費用は、公式に料金を出している例で3年間の固定費を比べると、クラウドが数十万〜数百万円、カスタマイズ型のモデルケースが数百万〜2,000万円台と、桁が変わることがあります。

この記事でいう「クラウド」は既製のサービスを月額で使うこと、「個別開発」は自社向けに作ることを指します。個別開発したシステムをクラウドのサーバーで動かす場合も、ここでは個別開発に含めます。

※受発注総研は、Bカート認定パートナーとして構築・運用代行を手がける株式会社Cravalが運営しています。

この記事でわかること

  • 既製のクラウドサービス・カスタマイズ型パッケージ・スクラッチ開発の違い
  • 各社公式の料金から試算した3年間の固定費の差
  • クラウドサービスで足りるかを確かめる手順
  • 個別開発が必要になる条件と、クラウドに連携開発を足す方法

クラウドと個別開発はどちらが向いている?

作り方は大きく3つに分かれます。

作り方中身始めるまで向いている会社
既製のクラウドサービス(SaaS)提供元が作った注文サイトを月額で使う。機能は設定で選ぶ短い。設定と商品・取引先の登録が中心一般的なBtoBの機能で足りる。初期費用を抑えたい。社内にIT担当者がいない
カスタマイズ型パッケージBtoB向けの製品をもとに、自社の業務に合わせて追加開発する要件定義と開発の期間が要る標準機能では足りない業務があるが、ゼロから作るほどではない
スクラッチ開発画面も機能もゼロから作る最も長い業務が独自で、既製品の考え方に合わせられない。自社で作り込み続けたい
表1:法人向け注文サイトの3つの作り方

判断の分かれ目は「自社の取引条件を、既製品の標準機能と連携でどこまで再現できるか」です。再現できる範囲が広いほどクラウドが合い、再現できない業務が売上や取引先の維持に直結するほど、個別開発の費用を払う理由が強くなります。

費用はどのくらい違う?

公式サイトに料金を出している製品で、初期費用と月額36か月分を足した3年間の固定費を試算しました。条件は商品1,000点・取引先1,000社程度、独自のカスタマイズなしとし、従量料金、決済手数料、運用の人件費、追加開発、表に書いた以外のオプションは含みません。

作り方例(公式の料金)初期費用月額3年間の固定費
クラウド(BtoB EC専用)Bカート プラン10(商品1,000・会員1,000)。注文承認・受注CSVインポートは別料金のオプション8万円19,800円約79万円
クラウド(BtoB機能はオプション)aishipR ベーシック+BtoBパッケージ(商品3,000・会員数の上限なし)。別途1注文ごとのトランザクション料金5万円49,800円約184万円
クラウド(汎用EC、BtoBは上位プラン)Shopify Plus(3年契約。1年契約は月額398,000円〜で約1,433万円〜)公式に記載なし368,000円〜約1,325万円〜
カスタマイズ型パッケージアラジンEC 小規模カスタマイズのモデルケース400万〜800万円7万〜10万円約652万〜1,160万円
カスタマイズ型パッケージアラジンEC 中規模カスタマイズのモデルケース800万〜1,500万円10万〜15万円約1,160万〜2,040万円
表2:3年間の固定費の試算(2026年10月15日に各社公式で確認。Bカート・aishipRは税別の表記、アラジンEC・Shopifyは公式に税の表記なし。出典:Bカート 料金プラン、アラジンEC 価格、aishipR 料金、Shopify Plus 料金)

この表の範囲では、BtoB EC専用のクラウド(約79万〜184万円)と小規模カスタマイズのモデルケース(約652万〜1,160万円)の間に、3年間の固定費で数倍から十数倍の差があります。一方、汎用ECのクラウドは、BtoB機能を使えるプランが上位に限られると、カスタマイズ型と同じ水準かそれ以上になります。クラウドだから安い、とは限りません。各製品の料金の詳しい比較は、主要9社を横断したBtoB EC構築プラットフォーム 導入コスト実勢調査2026にまとめています。

この表は前提条件がそろっていない参考値です。アラジンECの金額はモデルケースで、実際は見積もりで決まります。スクラッチ開発は公開されている料金がないため載せていません。自社の商品数・取引先数・必要な機能で各社に見積もりを頼み、同じ条件の3年総額で比べてください。

クラウドサービスで足りるかの確かめ方

クラウドで足りるかどうかは、機能一覧を読むより、自社のデータで試すほうが早くわかります。

  1. 例外の多い取引先を3社選ぶ:取引先別の単価、数量で変わる価格、締め日、最低注文数、送料の条件が一番複雑な取引先
  2. その取引先の価格表と過去の注文を用意する:実際にあった注文を数件、そのまま再現できるかを見る
  3. 無料の試用かデモ環境で再現してもらう:標準機能でできること、設定で工夫すればできること、できないことに分ける
  4. 社内システムへの取り込みを確かめる:受けた注文を販売管理や業務アプリに、CSVかAPIで取り込めるか
  5. できないことの重さを決める:運用で回避できるか、取引先に変えてもらえるか、どうしてもシステムで必要か

5番目で「システムで必要」と判断したものだけが、連携開発や個別開発の対象です。ここを詰めずに個別開発を選ぶと、既製品でできることまで作り直すことになります。社内システムとのつなぎ方は業務アプリと注文サイトの連携で、アプリごとの手段を比べています。

個別開発が必要になるのはどんなとき?

状況理由
業界特有の発注単位・承認の流れ・帳票があり、標準機能と既存の連携サービスで再現できない運用で回避すると、取引先か社内のどちらかに手作業が残る
基幹システムと在庫・価格・与信を即時に同期する必要があるクラウドのAPIの呼び出し回数や通知の仕組みでは、求める速さに届かないことがある
注文サイトそのものが取引先との差別化の手段で、画面や機能を作り込み続けたい既製品の更新の予定に、自社の改善の速さを合わせられない
取引の規模が大きく、クラウドの上位プランの月額が個別開発の保守費を上回る長く使うほど、固定費の差が逆転することがある
表3:個別開発を検討する状況

個別開発を選ぶ場合は、開発費だけでなく、保守・改修・セキュリティの対応を誰が何年続けるかを見積もりに入れます。開発した会社にしか直せない作りになっていないか、仕様書やソースコードを受け取れるかも、契約の前に確かめておきます。依頼先のタイプごとの頼める範囲はBtoB EC構築・移行の相談先にまとめています。

クラウドに連携開発を足す方法

クラウドか個別開発かの二択にせず、注文サイトはクラウドを使い、足りない部分だけを連携開発で補う方法もあります。

  • 基幹システムとの連携だけを開発する:注文の取り込み、在庫・価格の反映を、クラウドのAPIと基幹システムの間で作る
  • 特殊な帳票だけを外で作る:注文データを書き出し、業界の帳票を別のツールで作る
  • 承認や与信の判定だけを外で行う:注文をいったん保留にし、社内の仕組みで判定してから確定する

この方法は、クラウドのAPIで扱えるデータと、呼び出し回数などの制限に左右されます。どのデータを読み書きできるか、通知(Webhook)が届かない操作はないかを、提供元の開発者向けドキュメントで確かめてから設計します。

クラウドで始めて、後から個別開発に移ることもできます。そのときに困らないよう、商品・取引先・価格・注文履歴をCSVやAPIで書き出せるかを、契約前に確かめておきます。比較のポイント全体は受発注システムの比較で整理しています。

よくある質問

メーカーです。法人向けの注文サイトはクラウドサービスと個別開発のどちらが向いていますか。
取引先別の価格、掛け払い、承認、CSVでの社内システム連携といった一般的なBtoBの機能で足りるなら、既製のクラウドサービスが向いています。業界特有の発注単位や承認の流れ、基幹システムとの即時の同期が標準機能や連携で再現できない場合に、カスタマイズ型や個別開発を検討します。
クラウドサービスと個別開発で、費用はどのくらい違いますか。
公式に料金を出している例で3年間の固定費を試算すると、BtoB EC専用のクラウドは約79万〜184万円(Bカート・aishipR、税別)、カスタマイズ型のアラジンECは小規模カスタマイズのモデルケースで約652万〜1,160万円(公式に税の表記なし)です(2026年10月15日確認)。オプションや前提条件がそろっていないため、自社の要件で見積もりを取り、同じ条件の3年総額で比べてください。
クラウドサービスで足りるかは、どう確かめればいいですか。
自社の価格表と、例外の多い取引先の注文を、無料の試用やデモ環境で再現してもらいます。取引先別の単価、数量による価格、締め日や最低注文数、社内システムへの取り込みまで確かめ、足りない部分が連携開発で補えるかを見ます。
クラウドサービスで始めて、あとから個別開発に移ることはできますか。
商品・取引先・価格・注文履歴のデータを書き出せる製品なら、移行できます。書き出せるデータの範囲は製品によって違うため、移行先で取り込めるかも含めて事前に確かめておきます。契約前に、CSVやAPIでどのデータを書き出せるかを提供元に聞いておくと、移行の負担を見積もれます。

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