Index
このホワイトペーパーでわかること
本記事では、WEBメディアの事業モデルをご存知ない方でも「WEBメディアとは何か」
および、「WEBメディアのM&Aの進め方」がわかるようなコンテンツを提供しています。
実際にWEBメディアの買収を複数経験したコンサルタントからの生の情報やより詳細なM&Aの進行情報を知りたい方は文中、および記事下にあるDLフォームより資料をダウンロードしてください。
WEBメディア市場の成長とM&Aの重要性
1.メディアM&Aによって得られるもの
(1)WEB集客ができる自社メディア
web上に自社の発信した情報を常設できるため、ユーザーは24時間365日いつでも貴社が発信した情報にアクセスが可能であり、同時に貴社サービスの認知を獲得することができます。
(2)資産性のあるコンテンツアセット
(1)番の内容とも共通しますが、一度発信したコンテンツ(情報)は基本的にweb上に永続して存在し、集客の窓口として存在し続けます。
アルゴリズム変動によるブレはありつつも、検索流入等での永続的な集客チャネルとしての活躍を期待することが可能です。
(3)豊富な広告主、代理店とのリレーション
webメディアの基本的な商流は広告であり、アクセスの多いメディアや成約率の高いメディアは広告を出稿する広告主や広告代理店から高い広告単価で広告の提供を受けることが可能です。
元来、webメディアを新調するには長い時間を要しますが、M&Aをすることにより短期間でそのリレーションやステータスを自社のアセットにすることができます。
(4)アライアンス先
(3)番に記載した広告主や代理店との繋がり以外にも、コンテンツで使用する画像の使 用許諾であったり、一次情報を獲得するための有識者との繋がりなどよりよいコンテンツを制作する上で必要となってくるパイプラインもM&Aを行うことにより一度に承継することが可能です。
2.なぜwebメディアなのか?
(1)買収対価が下落傾向にある
多くのwebメディアはgoogleやYahooが提供する検索エンジンでの集客をメインの流入口としています。この検索エンジンにおいて、幅広いキーワード(検索するときに入力するワード)での集客を獲得すること、また、検索結果の画面で上位の表示位置 を獲得することが自社のメディアを利用するユーザーを獲得する上で最重要事項となっています。
しかし、近年のその検索エンジンの表示アルゴリズムは頻繁にアップデートが実施されており、検索結果の表示入れ替えが多く起こることからwebメディアの集客の安定性が低くなっていることから、買い手側のwebメディアに対する評価額は低くなりつつあると言えます。
(2)KPI分析が容易
インターネット事業全般に言えることですが、全てのデータが数値として計測できるため、事業としての改善策がスピーディに展開しやすく、PDCAの構築やサイクルの促進が比較的容易に行うことが可能です。
(3)維持コストの低さ
事業運営に必要な最低限のコストはドメイン費用、サーバー代程度であり、数千円/月から事業継続が可能です。
もちろんいくつかの作業を外注することでコストは大きくなりますが、様々なビジネスが存在する中でも維持コストは低い事業モデルと言えます。
反面、参入障壁も低く、法人個人問わず運営しやすい事業のため、競合が多い業界であるともうかがえます。
対象読者
本ホワイトペーパーはwebメディアの買収を検討されている企業様向けの記事です。
本記事を読むことで基本的なwebメディアの運用方法、ならびに事業買収を検討するための一連のフローを理解することができます。
特にwebメディアのM&Aを検討しており、過去に買収のご経験がない企業様にとって最初のバイブルとなるよう網羅的に情報を記載しておりますので、ぜひ最後までご覧ください。
WEBメディアの基礎知識
webメディアと一口に言っても、様々な種類が存在します。 利用する目的やマネタイズ手法、取り扱うジャンルや対象ユーザーによって適切なメディアの種別は異なります。
特徴 | |
オウンドメディア | ■コントロール幅 企業が自由にコンテンツを作成・発信できるため、ブランドメッセージをコントロールしやすい点が大きな特徴 ■長期的な視点で運用 一過性の広告ではなく、長期的な視点で顧客との関係性を構築可能 ■費用対効果が高い 構築後は、比較的低コストで継続的な情報発信が可能 ■SEO対策に効果的 質の高いコンテンツを継続的に発信することで検索エンジンからの評価が高まり、SEO対策に繋がる ex)企業ブログ、SNS、動画コンテンツなど |
ソーシャルメディア | ■双方向性: 一方向的な情報発信だけでなく、ユーザー同士がコメントやメッセージのやり取りなど、双方向のコミュニケーションが可能 ■多様性 文字だけでなく、画像、動画、音楽など、様々な形式での情報発信 ■拡散性 情報が短時間で広範囲に拡散されやすい ■参加型 誰もが情報発信者になれるため、多様な情報が収集可能 ex)SNS、ブログ、動画共有サイト、オンラインコミュニティなど |
キュレーションサイト | ■テーマの特化 特定の分野(ファッション、グルメ、ニュースなど)に特化 ■情報の選定 多くの情報から、質が高く、ユーザーにとって有益な情報を厳選 ■情報の整理 収集した情報を分かりやすく整理し、見やすいレイアウトで提供 ■独自の視点 編集者独自の視点や価値観に基づき情報に新たな価値を付加 ex)ニュースサイト、レシピサイト旅行キュレーションなど |
CGM (Consumer Generated Media) | ■双方向性 消費者も情報発信者となり、双方向のコミュニケーションが発生 ■多様性 様々な意見や情報が飛び交い、多様な視点から物事の理解が可能 ■リアルタイム性 最新情報が素早く拡散され、リアルタイムなやりとりが可能 ■拡散力 SNSなどを通じて、短時間で多くのユーザーに情報が伝わる ex)口コミサイト、掲示板など |
会員サイト | ■閉鎖性 一般ユーザーはアクセスできず、会員登録したユーザーだけ利用可能 ■限定性 会員だけに提供される特別なコンテンツやサービスが存在 ■コミュニティ形成 会員同士が交流できるコミュニティ機能がある場合も ■パーソナライズ 会員個々人の情報に基づいて、パーソナライズされた情報 ex)有料コンテンツサイト、コミュニティサイト、学習サイトなど |
例えば、自社から発信するコンテンツのみを掲載するメディアですとコンテンツの数量の担保は工数が必要となりますが勝手にメディア内にコンテンツが増えることもないので自社のコントロール範囲外で何か不適切な情報が掲載されることはないです。
一方、ユーザーが自由にコンテンツを投稿できるタイプのメディアですと不適切なコンテンツが投稿されていないかであったりユーザー同士のトラブルは発生していないかなどコンテンツを増やしやすい分、パトロール等の対策が必要になってきます。
WEBメディアの集客経路
Googleが提供するWEBメディア向けの分析ツール「Google Analytics」では自社メディアにおいて、どこからユーザーがアクセスしていきたのかを測る機能があります。 以下の表は基本的な流入経路をまとめたものです。
特徴 | |
organic(検索流入) | googleの検索結果からユーザーを集客する方法 この検索結果に以下に複数回、かつ上位表示させるかの施策を「SEO対策」という 明確な検索意図、ニーズを持っているユーザーが多い傾向 |
refferal(外部サイト流入) | 別のサイトから自社メディアへユーザーを集客する方法 ニュースサイトへの寄稿や外部サイトに記事を引用されるなどのケースが挙げられる ブラウンジングによって流入してきたため、サイト内回遊が期待できる傾向 |
social(SNS流入) | SNS上に自社メディアへのリンクを設置することでユーザーを集客する方法 すでにSNSで接点をもっているため、ファン層であることが期待できる |
mail(e-メール流入) | 自社の保有する会員宛にメルマガなどを配信し、文面に自社メディアへのリンクを掲載することでユーザーをメディアへ集客する方法 会員サイトでの集客モデルの王道とも考えられる |
direct(直流入) | ブラウザの検索窓に直接自社メディアのURLを貼り付けての流入であったり、お気に入り(ブックマーク)からの流入する方法 |
none(流入元不明) | 集客チャネルのデータがとれておらず、どこからユーザーが自社メディアに遷移してきたかわからないケース |
WEBメディアのマネタイズモデル
インターネットからユーザーを集めるWEBメディアでは様々な手法でのマネタイズが可能です。 特に広告関連のマネタイズが主流であり、モノの代理販売による収益から広告の露出や掲載枠の提供による収益など、カスタマイズや組み合わせは幅広いものになります。
運営するメディアの種別やジャンルによって適したマネタイズ手法は異なるため、自社や検討しているメディアに沿った手法を選択することが収益化における最重要事項といえます。
広告種別 | 特徴 |
アフィリエイト広告 | 広告主や代理店から案件を下ろしてもらい、掲載した広告経由でのCV(成約)に応じて手数料をもらうマネタイズ手法 |
ディスプレイ広告 | メディア内の広告枠に任意の広告を掲載し、その表示回数やクリック数に応じて掲載料をもらうマネタイズ手法 |
純広告 | メディア内に広告掲載枠を設け、その枠を販売することで収益を得るマネタイズ手法 |
コンテンツ販売 | コンテンツの一部のみを公開し、続きの情報へのアクセスやノウハウを閲覧するために料金を徴収するマネタイズ手法 |
会員料 | webサイトのコンテンツ閲覧や機能利用の対価として利用料を徴収するマネタイズ手法 |
(1)アフィリエイトモデルのKPIツリー
特定のユーザーニーズを満たす(可能性を示す)ことで報酬を得るアフィリエイトモデルでは、特定のキーワードを軸に流入を促す検索流入との相性が良いです。
Google社の定めるYMYL(Your Money Your Life)と呼ばれる人の人生に大きく影響を与えるジャンルにおいてはSEO評価を上げていく難易度も高くなり、且つアフィリエイトの商材としても報酬単価は高額になります。
成果数の多いメディアや購買したユーザーの質が高いメディアには「特別単価(通称、特単)」と呼ばれる通常の報酬単価より高い単価を提供されることもあります。
広告案件によって、成果(CV=コンバージョン)と見做されるユーザー行動も様々に設定されているため、設定されている報酬単価、成果地点 自社のメディアの特性・特徴との掛け合わせから 最適な案件の掲載を模索していく必要があります。
特に人気であったり、有名な案件は 複数のASP(Affiliate Service Provider)で取り扱いがあり 報酬単価や成果地点などもそれぞれで異なるケースもあるため 様々なASPサービスから案件を比較検討してみるのも良いかと思います!
(2)ディスプレイモデルのKPIツリー
「インプレッション(CPM)課金」と呼ばれる広告表示よって収益が発生するモデルと「クリック(CPC)課金」と呼ばれる広告をクリックされることで収益が発生するモデルの2つがあります。
前者の方が収益化の難易度は低く、後者の方が広告単価は高くなります。
検索流入で大量にアクセスを獲得するのもそうですが、すでにアクセス量の多いメディアや外部サイトからアクセス動線を引く集客と特に相性が良いです。
ディスプレイ広告を卸している事業者から仕入れるケースがほとんどであり、広告枠数や広告枠の位置などで大きく売上が異なってくるため、日々の細かな微調整が必要になってきます。
※CPM:Cost Per Mille :1,000回、広告を表示させるのに必要な広告費用のこと
※CPC:Cost Per Click :1クリックあたり課金される広告費用のこと
外部サイトへ記事を寄稿する集客モデルでは SEO対策向けの記事と異なり 数多くの記事から自社の記事をクリックしてもらうための キャッチーなタイトル付けや トレンドに合わせたコンテンツ企画などと併せて 定常的にコンテンツを多数排出できるような 運用体制の構築が重要になってきます。
その分、1記事の文字数はSEO記事に比べてライトものになり 800~2,000文字程度のものが多いです。
(3)純広告モデルのKPIツリー
広告主がメディアの広告枠を買い取るモデルのため、まとまった収益が期待できる収益モデルです。
提供内容として、広告の掲載期間や表示回数を保証するケースがほとんどです。
メディア規模としてある程度のユーザーを抱えている状態であれば、営業は可能だと考えられます。
成約後は掲載し続けるのみの場合も多く、広告運用の知識は前2つのモデルと比べて、必要になるシーンは少ないです。
広告主にとっては、最適なメディアを選ぶことで 一定の効果を期待することも可能ですが メディアを選びを誤った場合、他のマネタイズ手法とは比較できないほど CPCやCPAが高騰するケースもあります。
成約後のトラブル防止のためにも広告枠を提供するメディア側として 広告主の期待値コントロールや掲載位置、方法などは 慎重に選択をするべきであると考えられます。
(4)コンテンツ販売モデルのKPIツリー
特にインフルエンサーが展開するメディアに多いマネタイズモデルと言えるモデルです。
メディアで集客したのちに自身で作成したコンテンツ(文章コラムや動画など)をユーザーに購入してもらう必要があるため、情報発信者の信頼性や権威性が必要なってくると考えられます。
特に恋愛やビジネスノウハウとの相性が良いと言われています。
シリーズ化することで複数回の購入を促すことも可能であり、取り扱うコンテンツを増やすことでより安定的な収益源とすることができそうです。
(5)会員売上モデルのKPIツリー
会員限定コンテンツ等をフックに自社メディアの会員としての登録料を徴収するモデルです。
メディアを日常的に使う理由づけが必要であり、コミュニティサイト等はこのモデルでのマネタイズがしやすいと考えられます。
ユーザー同士の交流を活発化させるチャット機能の開放等もそうですが、月毎などで新たなコンテンツ等を配信して会員登録をしてもらい続ける努力が必要になってきます。
自社で報酬単価を設定できるため、売上を構成するKPIにおいて、会員登録数をのみを追うためのシンプルな指標にできる点が魅力の一つです。
WEBメディアの注意点
(1)ドメインパワー
検索流入を強化するにあたって、Google検索アルゴリズムからの評価を受けるためにも重要なファクターがドメインパワー(ドメインの評価)になります。
良質なコンテンツ(記事)であることはもちろん、情報の発信者としてドメイン(サイト自身)の評価も高いものである必要があります。
ドメインパワーは以下の複雑な要素で構成されており、ユーザー(読者)にとってより良いサイトとなっているか、Google社の定めるガイドラインに沿った運営ができているかによって決定されると言われています。
上記要素の他にもドメインエイジ (ドメインが有効されてからの経過期間)も重要であると言われており、 唯一コントロール難易度が他項目と比較して高いポイントでもあります。
ドメインエイジの調べ方は「https://ohotuku.jp/ip_checker/」 がよく使用されます。
また、ドメインエイジの長いものには過去に全く異なるサイトのドメインとして使われていたものも存在しており、全く異なるジャンルのメディアである場合、Googleからの評価もそのジャンルのメディアとして受けている可能性があるため、M&Aを避けるべきサイトの1つとして調査を行っていました。
サイトの品質ではなく、性質を調べることも重要です。
過去どのようなメディアであったかは「WayBack Machine」 という無償ツールで簡単に調べることができます。
(2)寄生サイト評価への対策
WEBメディア運営においてドメインが重要であることから、強い評価を受けているドメインの配下に別メディアを立てる運営手法がトレンドになりました。
具体的には以下の2つの手法でメディアを運営しているものが該当します。
いずれも正しく活用すれば良いSEO効果を享受することが期待できますが、大元のドメインで運用されているメディアと全く異なるジャンルのメディアを運営する場合は、良い評価を受けられないどころか、反対に悪いメディアとして認識されてしまう可能性があります。
このようなメディアは、強いドメインにぶら下がる形でメディアを立ち上げるため「寄生サイト」と呼ばれることがあります。
ルートドメイン(大元のドメイン)でのサイトの調べ方は 上記スライドに記載のあるURLの色付き文字の部分を 削除して検索をし直す方法が最も容易です。
メディア運営は類似のジャンルの判断がつきずらい部分でもあるため 大元のドメインで獲得しているキーワードをツール等で抽出し それらを形態素分解し、大元のドメインがどのような形態素でGoogleからの評価を受けているかをチェックしていました。
(形態素の登場回数が多い= その形態素を含むキーワードで評価を受けているという整理)
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第2位や第3位の形態素を含むキーワードの取得を狙うメディアとして サブドメインやサブディレクトリを活用していくことが良いと考えています!
ITサービスのM&Aの現状
(1)IT関連のM&A件数推移
以下が、ITサービス関連のM&Aの件数推移です。
2019年で一度減少はしてしまっていますが、トレンドラインとしては増加傾向にあります。 大手企業に集中していたM&Aという選択肢が、中小企業にも波及してきていることが背景にあると考えられます。
また、以下はインターネット広告市場規模の推移と予測であり、今後もwebメディアを含めたITサービスのM&Aは活発化していくことが予想されます。
(2)譲渡対価の算出方法と相場
WEBメディアにおけるM&Aでは基本的に後述する「事業譲渡」というスキームを活用されることが多く、対価の算出式としては以下のような方法で計算されることが多いです。
当該メディアの営業利益 × ◯ヶ月分
WEBメディアの多くは検索流入をメインとしているものが多く、Googleのコアアルゴリズムアップデートによりアクセス数の上下が頻繁に起こりうることも鑑みて、営業利益の12~18ヶ月分で算出されるケースが多いと考えられます。
一般に出回る案件としての譲渡金額は数千円〜数億円規模と幅広く提示されており、自社の予算感と求める案件の品質によって規模感は大きく異なります。
実態としては、アクセスが多数集まっているのに 収益化をしていないメディアであったり 一定以上の収益が出ていたとしても 営業利益が赤字になっている案件も多数存在します。
自社ですでにWEBメディアを運営している場合は自社の運営に置き換えて どれくらいの期間でどれほどの収益が見込めるかの シミュレーションを行います。
具体的にはコストカットの観点から運用体制に無駄がないかであったり アフィリエイト案件の単価は自社の方が高いものではないかや同規模の自社メディアではどれほど売り上げを伸ばせているかなどの要素から判断します。
また、収益が小規模の案件の場合、収益が出ている月と出ていない月でムラがある場合が多く、過去一定期間分の収支(P/L)を確認し 自社の判断のミスリードを防ぐことにも注意すべきです。
上記のような収益以外に取り込みたい魅力のあるメディアの場合は シナジーやグロース計画をより詳細に描く必要があります。
このケースにおいても、WEBメディアの市況は他領域と比較しても うつろいやすいため、12~18ヶ月ほどで回収しうる 譲渡対価としておくことを強く推奨します。
M&Aの基礎知識
(1)M&Aスキーム
一口にM&Aといっても手法は目的によって様々なものが存在します。 以下は体系的にM&Aの手法をまとめたものです。
多様なスキームが存在しますが、WEBメディアのM&Aにおいては事業特性上、「事業譲渡」というシンプルなスキームが選択されることが多いです。
特に買い手にとっては、対象事業のみを切り出して買収ができるため、余分な資産や負債を承継せずに譲受が完結できる点で好ましいと考えられます。
また、譲渡対価も対象事業を絞っているからこそコンパクトにできる可能性が高いです。
私が過去に経験したM&Aにおいても およそ9割が「事業譲渡」のスキームを選択しています。
対象事業の特性にもよりますが 外部との契約がそこまで多くない事業においては契約主体の変更を行う工数も大きくないため、事業譲渡が主流となっていると考えています。
反対に、外部との契約が多く成り立っているメディア 例えば、多くのニュースサイトに記事寄稿している もしくは記事寄稿を受けているようなメディアであれば契約主体を 丸ごと移管できるようなスキームの選択が必要です。
私の場合、そのようなメディアは吸収分割という形で処理をしました。
(2)M&Aの進行フロー
一般的なM&Aの進行フローは以下の通りです。
案件の開拓を行う前のM&Aの目的の整理から買収後の企業(事業)統合まで、M&Aの進行には一定上、長期間の対応が必要になります。
WEBメディアM&Aのフロー
WEBメディアM&Aの進め方
(1)ソーシング
買収案件を探す行為のことをソーシング(タッピングともいう)といい、主に以下の3つの手法で案件を探していきます。
手法 | 詳細 | 代表サービス |
ダイレクト ソーシング | ・WEBメディアでは基本的に「お問い合わせページ」を設けていることが多く、そこから買収意向を伝える手法 ・テンプレート文面を活用することで短期間に数多くのメディアにアプローチをすることが可能 |
ー |
M&A仲介 | ・売り手と買い手を1社でサポートしてくれる企業 ・定常的なコミュニケーションからニーズに沿う案件を紹介してもらう ・成約や一定のフェーズごとに報酬が発生する |
・M&Aクラウド ・ウィルゲート ・AIGATE |
プラットフォーム | ・売り手が自社案件を掲載し、買い手とのマッチングを待つ ・M&A仲介と比較しても手数料等は安価だが、サポートを十分には受けられない |
・BATONZ ・TRANBI ・サイトストック |
①ダイレクトソーシング
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買収の持ちかけは珍しいため売り手にとっても目につきやすいものではあるため、件名や最初の一文でM&Aの意向があることを伝えることによって返信率の引き上げを期待することができると考えられます。
私の経験上、返信率は2%前後、アポ率は1%前後でした。
②M&A仲介
1人の担当で数多くの買い手企業を抱えているケースが多く、定常的なコミュニケーションを取ることで買い手としての第一想起に入るようになり、スピーディ、且つ安定的な案件の供給を受けられることが期待できます。
③プラットフォーム
小規模案件でジャンルを問わなければ こちらの手法が一番スムーズに案件を発掘することができそうです。
案件の引き合いも多いため、スピーディに検討を進める必要が高く M&A巧者に向いているとも考えられます。
(2)初期ヒアリング
買収の検討するにあたって必要な事項を対面・オンライン・ヒアリングシートの共有などを行って情報収集をします。
基本的に売上や運営コスト、運営体制などを確認するために行います。
初期判断を行うにあたっての必須項目、譲渡対価や譲渡対象、希望のM&Aスキームなどに始まり、買い手として外せない条件が漏れていないか、もしくはNG条件に該当していないかなどをチェックします。
以降のフェーズにも登場する最終契約書(DA)の表明条項に関する別紙とすることもあるため、初期段階からM&Aの最後まで活用する重要な書類の一つであると言えます。
Cravalが提供する買い手特化型M&A支援サービス「B-MPO」では、全てのクライアント様にヒアリングシートのテンプレートなどの必要書類を無償で提供しています。 M&Aをお考えの買い手の企業様はぜひお気軽にお問い合わせください。
(3)スクリーニング
案件を実際に具体的に検討していくかの初期判断です。
まずは自社のM&Aスコープにマッチしているかで判断を行います。
具体的には、収益規模・買収予算・売却意向の有無・自社運営した際のグロース可能性・表面化している運営リスク等を考慮し、進めるか否かのジャッジを下します。
現在だけの数値を見るのではなく、過去からの推移を見ることが重要です。
過去にアルゴリズムの変動でアクセスを落としていないか トラフィックが変わっていないのに売上が落ちている場合、記事のCVRやアフィリエイトの特別単価の提供がストップしたなど 安定性や将来性にかけるものはなるべく検討から外したいです。
安定してアクセスや売上を伸ばしている (もしくはキープしている)ものが好ましいと考えられます。
アフィリエイトメディアの場合は 売上の構成が単一の商材に偏っていないかを注目すべきです。
案件の終了やアクセスを獲得していたキーワードの順位下落によって 売上が崩れる危険性が高いことに起因します。
特に前述したYMYLの領域は検索結果の順位入れ替えも激しく 強固なドメインと運用体制、権威性ある監修者などがいない場合は 参入すべきではないと考えます。
ニュースサイトの場合は 寄稿される記事が多く、全てを検閲することは現実的ではないため 寄稿された記事に起因するトラブルは 寄稿元が責任をもって応対する旨の契約や覚書があるかを重視すべきです。
反対にニュースサイトに寄稿してアクセスを集めている場合は 一つのニュースサイトからの流入に偏重していないかを 注視すべきであるといえます。
(4)TOP面談
買収意向を伝えるためにトップ同士の面談を実施します。
このタイミングで具体的な売却条件を聞き出し、両者で擦り合わせるケースが多いです。
譲渡対価や買収スキーム、譲渡時期、譲渡対象物などの条件が挙げられます。
このタイミングから譲渡後のことを見据えて交渉に臨むべきです。
特に譲渡後のサポート内容や期間が必要であれば売り手からのコンサルティングを 希望している旨を伝えてしまった方が良いと考えられます。
最終契約段階で新たな条件を出すのは、 ディールブレイクを避ける意味合いでも 可能な限り控えた方が良いでしょう。
(5)意向表明書(LOI - Letter Of Intent -)
買い手側の買収意向を売り手に差し入れるための書面です。
記載内容としては買収予算、買収スキーム、買収対象範囲、今後のスケジュールが基本事項です。
差し入れ式のため、双方押印ではなく買い手側の企業のみの押印で売り手に渡します。
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後々DDをした際などに買収予算は変更されるケースも多々あるため、 売り手を困惑させないためにも、買収予算の部分では 「今後開示される情報や検討において、上下する可能性がある旨」 を明記しておくことでトラブルが避けられるでしょう。
特にSEOの変動等で契約前に大幅にアクセス数が変わってしまう場合など WEBメディアは短期で事業数字が変動してしまうこともあるため 最終契約までは譲受価格の確定は控えるべきです。
(6)基本合意書(MOU - Memorandum Of Understanding -)
こちらも買い手側の意向を売り手に表明する書面ですが、LOIとの違いは売り手も書面に押印することにあります。
つまり、売り手も提示された条件に合意し、今後の進行を行う旨を明記するということです。
多くのMOUでは買い手に独占交渉権が付与され、一定の期間、1社独占検討を進めることが可能になります。
独占交渉権は基本的に売り手にとってはマイナスが大きくなるため、スピーディに検討を進めるためであったり、他の買い手よりも高い買収予算を提示するなどなんらかのメリットを提示することが必要となってきます。
記載する事項は独占交渉権と除き、LOIと基本的に同様のものとなります。
Cravalが提供する買い手特化型M&A支援サービス「B-MPO」では、全てのクライアント様にLOIやMOUのテンプレートなどの必要書類を無償で提供しています。
M&Aをお考えの買い手の企業様はぜひお気軽にお問い合わせください。
(7)事業計画(投資金のリクープ計画)の策定
譲受価格(投資金)の金額の整合性を評価する意味合いでも、買収予算の回収計画(買収事業の成長計画)を策定します。
売り手が事業計画を作成している場合はその整合性も併せてチェックしていきます。
最小単位まで当該事業のKPIを分解し、売上構成のどこにレバーを効かせることができるのかを慎重に判断して、操作していくことが重要です。
特に自社にない新しい事業やビジネスモデルを買収する際は 必要に応じて、その領域に詳しい有識者へのアドバイス も有効打になり得ますので、積極的に活用していきましょう。
私がM&Aを担当した際はX(旧Twitter)で情報収集を行い X上もしくはfacebook messengerでDMをお送りし 有識者の方とランチMTGを実施していました。
案外、返信返ってきます(笑)
(8)DD(デューデリジェンス)
買収事業の価値やリスクを調査し、投資に値するか否かの判断を行います。
当該事業に係る様々な観点から評価を実施しますが、WEBメディアの場合は、ビジネス、財務税務、法務、システム、人材の5観点での実施が主流だと考えられます。
ビジネスDD | |
実施事項 | 必要物 |
・事業計画書の確認 ・事業P/Lの確認 ・広告管理画面の証憑チェック ・保有ライターの確認と評価 ・記事別PV分散の調査 ・記事別売上分散の調査 |
1.財務諸表 2.事業計画/メディア概要 3.ライター情報 4.広告アカウント情報 5.競合情報 6.規制関連書類 |
法務DD | |
実施事項 | 必要物 |
・コンテンツ利用許諾のチェック ・ソフトウェア利用許諾のチェック ・サービス提携契約の内容確認 ・知的財産権侵害の有無確認 ・事業モデルが法規制への適合を成しているかの確認 |
1.定款 2.株主名簿 3.契約書/労働契約 4.許認可 5.訴訟記録 6.知的財産権に関する書類 |
財務DD | |
実施事項 | 必要物 |
・過去の収益と将来の収益予測を分析 ・メディア運営にかかるコスト構造の確認 ・メディアが保有する資産の評価 ・負債や未払いの項目の確認 ・入出金の証憑確認(通帳の写しや請求書、広告管理画面など) ・主要な取引先や広告主の信用状況の確認 ・キャッシュフロー/入出金サイトの確認 |
1.財務諸表 2.会計帳簿 3.税務申告書 4.予算書 5.債権債務明細 6.固定資産台帳 7.監査報告書 |
システムDD | |
実施事項 | 必要物 |
・使用されているシステムの全体構成、技術スタックの確認 ・サーバーやクラウドインフラの構成と運用状況の確認 ・システム運用・保守に関わるチームの体制やプロセスの確認 ・使用しているデータベースの構成、データ量、パフォーマンスの確認 ・メディアのコンテンツを管理するシステムの確認 ・外部のAPIやサードパーティーのサービス利用状況の確認 ・古い技術や非推奨の技術を使用している箇所の確認 ・システムの災害復旧(DR)対策や冗長性の確認 ・システムデータやコンテンツのバックアップの確認 |
1.システム一覧 2.ソースコード 3.データベース構造 4.システム・インフラ構成図 5.開発ドキュメント 6.セキュリティポリシー 7.バックアップ 8.障害対応計画 9.アクセスログ |
人材DD | |
実施事項 | 必要物 |
・組織図や人員構成、役割分担の確認 ・キーとなる人材のスキルや退職リスクの確認 ・従業員との雇用契約内容の確認 ・ライター/ディレクター等の業務委託契約の確認 ・過去の退職者や今後の流出リスクの確認 ・リモートワークや柔軟な勤務形態の実施状況の確認 ・インセンティブ等の報酬制度のチェック |
1.組織図 2.従業員リスト 3.人事評価制度 4.教育訓練記録 5.離職率データ 6.労務管理資料 7.インタビュー議事録 |
DDは他事業部のメンバーが多数関係してくるフェーズなので M&Aを進行する担当としてはスケジューリングと各 項目から出てくる調査結果やリスクを体系的に取りまとめ いち早くリスクに対する対策と買収判断 経営層への報告に備えていく必要があります。
異なる観点でも同様のリスクが見つかる可能性があり その場合は関係者全員でのディスカッションにより 解決策を見出していく効率が良いため 必要に応じてデイリーやウィークリーで 各者の進捗を確認する場を設けるとよいでしょう。
(9)価値算定書
上場企業等の場合、FAS(ファイナンシャルアドバイザリーサービス)へ開智算定書の作成依頼をする必要があります。
譲渡対価の妥当性についての意見をもらい、回収計画等の現実性を吟味し、意見書をもらいます。
回収後は取締役会等の経営判断を行う会議に付議をします。
(10)最終契約書(DA:Definitive Agreement)
M&Aの集大成とも言えるのが最終契約書です。
契約書は基本的に双方の権利と義務の記載がベースとなります。
M&Aの集大成ともいえる項目なので、これまでヒアリングやDD等で判明したリスク等を加味して契約書に落とし込みきることが大切になってきます。
Cravalが提供する買い手特化型M&A支援サービス「B-MPO」では、全てのクライアント様にDAのテンプレートなどの必要書類を無償で提供しています。
M&Aをお考えの買い手の企業様はぜひお気軽にお問い合わせください。
以下は最終契約書に記載される基本的な項目です。
最終契約書の基本的な項目
■対象物
事業運営に必要な一切を漏れなく記載する必要があります。
特に抜け漏れ多いのが、商標やドメイン、サーバーの関する情報、およびライターの引き継ぎ条項です。
クライアント企業との契約など事業存続に関わる契約も忘れないようにしましょう。
■債権債務の移転日
当該事業の売上の帰属と事業運営にかかるコスト負担主体の移転日を示します。
譲渡対価の入金日を起点とするケースが通例です。
■権利義務の譲渡禁止
契約違反による求償対象が突如変更になり、求償することが困難になることを防ぐ目的があります。
■表明と補償
買い手、売り手共に契約書の他別紙添付した書面において違反と虚偽がないことの表明します。
および、違反・虚偽があった場合の賠償金を求償できる権利がある旨を明記します。
ヒアリングシートに記載の事項も対象とすることで買い手のリスクを抑えられる可能性があります。
■特別補償
判明している潜在リスクに対して特別事項として売り手に求償できる権利の記載します。
ex)売上構成の重要な要素となる契約の承継に失敗した場合など
■譲渡後の売り手からサポート内容
譲渡後にスムーズに運営を継続するために、人員の移動がない場合は自社メンバーへのレクチャーや質疑応答の時間などを確保しておくことが必要です。
基本的に1~2ヶ月ほどの期間を設けることが多いですが あまりに長い期間などを要求すると 別途コンサル費用や譲渡対価の上乗せなどを要求されるケースも 多いため、事前に売主とすり合わせておくことが良いと考えられます。
タイミングとしては意向表明書を提出する前の TOP面談などが好ましいと考えられます。
■解除条項
契約自体をなかったことにする条項です。
譲渡対価の返金を要求でき、譲渡前の状態に事業を戻すことが必要になりますが、webメディアの場合、もとの状態に戻すことが困難であるため、あまりこの条項をアクティベートすることは現実的に考えにくいです。
■連帯保証
補償の内容・金額に対して、代表の個人保証や親会社を保証対象に入れることで、トラ ブルがあった際の求償を十分に行う担保が確保できます。
■アーンアウト条項(※必要に応じて)
譲渡対価のうち、イニシャルを入金し、譲渡後の該当事業の業績に応じて残りの金額の支払額を決定していくスキームです。
google アルゴリズムの変動で収益をされやすいメディアの事業モデルにおいて、買い手のリスクを売り手と分散できる点で優秀なM&Aスキームと考えられます。
最終契約書についての注意点
■補償期間と補償対象範囲
webメディアに掲載されているコンテンツの内容に、第三者の知的財産権の侵害やその他潜在リスクに対して、売り手の報告と異なる点が判明した場合やあらかじめ判明しているリスクを売り手と痛み分けする場合などにそのリスクが顕在化した場合の補償額と算出方法、求償期間などを設定する必要があります。
ex)記事内の画像が無断利用であり、権利元から異議申し立てを受け、賠償金を払う場合(※1)や掲載しているコンテンツの削除をした際のその記事から得られていた収益が無くなってしまう場合(※2)などが考えられます。
【算出方法例】
①譲渡対価の減額= 想定されうる賠償額×当該リスクの発生確率
②求償額= 当該記事のアクセス量÷webメディア全体の アクセス量×webメディア全体の収益
■競業避止期間の設定
同様もしくは類似のWEBメディア事業の立ち上げを一定期間禁じる条項です。
当該事業領域において、買い手よりも知見やノウハウがある売り手が類似事業を立ち上げ、再開して、同一市場内でのバッティングが起こることによって買収効果の低減が生じることを避ける意味合いを持っています。
売り手自身での類似事業の立ち上げ以外にも 他企業のサポートに入られてしまうことで同様の障害がおきうるため 類似事業への関与を禁じる等、範囲の設定に考慮が必要となり 売り手の関与しうる範囲を予め想定しておくことが重要です。
(11)移管作業
■債権者および各種ステークホルダーへの報告
会社分割(新設分割・吸収分割)や会社合併(新設合併・吸収合併)を行う場合、債権者の同意なしに債務が買い手に承継されてしまうため債権者債権者保護手続きが必要があります。
これは当該譲渡に対しての異議申し立てを行うことができる債権者の権利として存在します。
基本的に告知は官報公告の手法を取り、時には手紙やDM等の個別の連絡手段でもアナウンスをしてあげることで債権者にとって優しく、理解を得やすくなるかもしれません。
最短で1ヶ月ほど期間確保が必要になります。
期間内に異議申し立てがあった場合、告知企業は債務の弁済や債権に対しての担保を提供するなどの対応が必要となります。
M&Aスキーム | 債権者保護対応の要否 |
株式譲渡 | 不要 |
事業譲渡 | 不要 |
株式交換・株式移転 | 基本的に不要 |
会社分割 | 必要 |
合併 | 必要 |
■IR・適時開示
上場会社がM&Aを行う場合に必要となってきます。
上場企業は株式を一般公開している関係上、数多くの投資家から資金を集めており、それら投資家の投資判断に必要な情報を開示する必要があるためです。
適時開示の対象は様々ありますが、M&Aもその対象の1つです。
株価の変動に大きく影響を与える事象でもあるため、M&Aの背景やこの事業でなければばならない理由を投資家目線で丁寧に記載することが重要です。
■システム移管
買収後、実際に事業運営をするために、webメディアを運営する上で必須となるサーバー移管の移管作業やドメイン名義の変更等が必要になります。
各種契約主体の変更で完了するものからエンジニア対応が必要なものもあるため、通常業務とのリソース配分も考慮した移管スケジュールの構築が必須です。
譲受後の運営をクリーンかつスムーズに行うためにも、ソースコード等を適切に移管できる力量のあるエンジニアが必要不可欠です。
移管作業中はメディアの更新ができなくなるため 売り手とのスケジューリングとディレクションや ユーザーからの投稿などができるメディアにおいては ユーザーアナウンスを事前に行っておくことで 必要のないトラブルを防ぐことができます。
※その他分析ツールと移管方法
主要なWEBメディアの分析ツールも過去のデータを引き継ぐことができる移管が可能なものがあります。
分析ツール | 主な移管方法 |
ミエルカアカウント各種 | 1.アカウントアイパスの共有 2.登録情報の更新(アドレスとパスの書き換え) |
GRC | 1.引越しデータの作成 2.新PCへのライセンスキー受け渡し 3.引越しデータの取り込み |
■広告案件の張り替え
webメディアの多くのマネタイズ手法である広告収益においては、広告成果を計測するためのタグをコンテンツ内のリンクに掲載します。
特にアフィリエイト広告の案件を卸しているASPは各社のアカウントに紐づいたタグを渡してくれるため、元々の売り手のアカウントを承継せずに自社のアカウントで発行したタグを貼り付ける場合には、タグの張り替え漏れによる、承継後の収益が一部売り手企業に入金されるケースが多々起きています。
タグの張り替え対象となるコンテンツ量が 膨大な大規模webメディアほど、この事象は発生しやすくなるため 売り手の状況との兼ね合いにもなりますが ASPアカウントをそのまま承継してしまう方が 工数的な意味合いも含めて安心であると考えられます。
事業譲渡を前提で売却をお考えの方は メディアごとでASPの契約・管理画面を分けてしまった方が 譲渡時の対応がスムーズになります。
■Googleサービス各種のアカウント移管など
webメディアの数値推移を把握するために利用するGoogleサービス等の権限移管です。
主な手順は以下の通りになります。
①自社のgoogleアカウントを当該アカウントに招待してもらいます。
②売り手アカウントから自社のアカウントに管理者権限を移し替えてもらいます
③その後、元の売主のアカウントを削除することで完了します。
■PMIチームの組成
M&Aの進行中は社内のハレーションを避ける意味合いも含めて、クローズなメンバーのみの情報共有に留まるケースが多いため、M&Aの実行完了後に多くの社内メンバーはM&A実行の事実を知ることになります。
そのため、PMIにアサイン予定のメンバーの多くも最終契約締結後に社内告知、チーム組成されることが多くスピーディーなPMIには事前の計画立案が必須となります。
M&Aした新規事業の伸長のために 既存事業のリソースを狂わせてしまい 事業進行の弊害となってしまっては本末転倒です。
PMIチームは既存の複数のチームに跨って メンバーを召集するケースが多く 各チーム長や事業部長クラスには事前の告知をしておくことで そのチームで検討していた施策や 召集メンバーに元々期待していた役割を 別メンバーへの再配分するなどを余裕を持って行えるでしょう。
代表的なメディアのM&A事例
(1)ポートによる「楽天みん就」の買収
新卒ユーザー総会員数約60万人を誇る国内最大級の就活コミュニティサイト「楽天みん就」をWEBメディア事業をメインに事業展開する上場企業ポート社が買収。
取得価格は22.5億円。
M&Aスキームは吸収分割。
当該M&Aにより、ポート社は「キャリアパーク」などの人材領域のWEBメディアも運営しており、人材領域におけるカバレッジの拡大に成功。
(2)ログリーによる「転職アンテナ」の買収
国内最大級のネイティブ広告プラットフォーム「LOGLY lift」を運営するログリー社による大規模転職メディア「転職アンテナ」の買収。
取得価格は7.35億円~10.5億円。
M&Aスキームは株式譲渡のアーンアウト方式。
転職ジャンルにおける広告配信のジャンル拡大とこれまでの蓄積データを活用した「転職アンテナ」の広告収益増加を見込んでのM&Aだった。
(3)リアルワールド(現:デジタルプラス)による「漫画大陸」の買収
「デジタルギフト」をはじめとするフィンテックサービスを展開するデジタルプラス社による大手漫画紹介メディア「漫画大陸」の買収。
取得価格は2.2億円。
M&Aスキームは事業譲渡。
旧事業として展開していたクラウドソーシングサービスのノウハウを活用した低コストでのメディア運営と既存の事業マーケティングツールを活用した運用の効率化をを狙ってのM&Aとのこと。
(4)じげんによるアップルワールド社の買収
人材・不動産系のメディアプラットフォームを複数運営するじげん社による、旅行・ホテル系のメディアを運営する「アップルワールド社」の買収。
取得価格はおよそ14.4億円。
M&Aスキームは株式譲渡。
ユーザーと企業とのマッチング力を活用し、送客力の強化を図りつつ、同社として新たな領域である旅行業界への参入を果たすM&Aとなった。
中村健太 -Nakamura Kenta-
1994年7月生。
Sprott Shaw College卒。
千葉大学 法政経学部卒。
プロパーでインターネット事業を複数展開するベンチャーへ就職。
WEB広告営業を1年経験した後、同社のM&A室立ち上げメンバーに抜擢。
GMOグループをはじめとした3社間M&Aを含む複数の事業譲受実行を経て
グロース上場企業へ同じく買い手側のM&A執行者としてジョイン。
2案件の同時買収を遂行した後、同案件のPMIを担当。
WEB広告代理店におけるM&Aの買い手支援を完了後に
2024年8月、CravalのM&Aコンサルタントとして参画。